適応と進化の過程: ホワイト ペーパー

このホワイト ペーパーは、「From the trenches」コレクションの一部です。ここでは、エンタープライズ システムの実装を成功させるために必要な適応と進化について説明します。

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適応と進化の過程

長年にわたって、エンタープライズ ソフトウェアの選定と展開において私が観察してきた最大の危険の 1 つは、実装とは静的な目標を達成することであると考えてしまうことです。このことは現代に象徴的なことかもしれません。私達は世界のすべてを簡略化しようとするからです。「プロジェクトを管理するのはそれ」、「タイムシートはそれ」、「ERP システムはそれ」、「EPM システムを運用している」といった言葉で、継続的に考えなければならない業務のすべての側面を矮小化してしまいます。これらは、エンタープライズ システムが関係する事柄かもしれません。一方で、私が担当した組織のうち、エンタープライズ プロジェクトやエンタープライズ タイムシート システムの展開で最も成功している組織では、必ずそれらを、絶えず進化する「生きるシステム」であると考えています。

システムは静的であると考えてしまう理由

動的な環境と見なされるエンタープライズ システムの方が成功する可能性が高いことが本当であれば、なぜ、多くの組織が、エンタープライズ システムは固定したソフトウェアであると捉えるのでしょうか。

これには多くの理由が考えられます。

その 1 つとして、エンタープライズ システムの受け入れは、システムの予算が承認されるチャンスが 1 回限りである、複雑な予算編成の環境で投資対効果検討書を作成する、という理由が考えられます。毎年、または予算サイクルのたびに立ち返って、別の段階、さらにまた別の段階を要請することは、政治的に不可能です。

あるいは、システムを継承して、システムが実現する機能に関してある種の約束がなされているか、システムがしばらくの間存在していたため、組織の全員が、システムを業務機能の設定済みリストのみを実現するものであると考えている場合があります。

または、社内で政治力が作用し、境界のないシステムを恐れる人が組織のどこかに存在する場合もあるでしょう。

このような考えの間違っている点

ソフトウェア システムを静的であると考えるとは奇妙なことです。通常は、システムが解決すべき問題を静的なものとは考えません。エンタープライズ システムの実装に関連する問題の内容は、必ずと言っていいほど進化するものです。それらの問題は、変化する経済状況、変化するビジネス環境、競合他社の活動内容の変化、人員の変化、または技術的なアーキテクチャの変化に依存します。ビジネスの状況が決して変化することはないと考える組織が長期にわたって業界に残れる可能性は、まずありません。エンタープライズ ソフトウェアについて考えれば、ソリューションのテクノロジ面がどれほど急速に変化するかについて考えることになります。当社独自の TimeControl タイムシートのビジネスでは、20 年間で 6 回、テクノロジ アーキテクチャを大幅に変更しました。1994 年の開始当初は DOS バージョンでしたが、その後 1995 年には Windows バージョンになり、続いて 1997 年にはクライアント/サーバー バージョンになりました。さらにその後 1999 年にはブラウザーベースのバージョンになり、2010 年にはクラウド内ホストとモバイル バージョンに至りました。変化する経済状況、競合他社、および純粋に経験からも、その他の進化が生じました。エンタープライズ プロジェクト/エンタープライズ タイムシート ソフトウェアを発行する業界にある当社では、変化は絶えず発生するものであると受け止めています。

エンタープライズ システムの展開について考察する場合も同様です。Project Server などのエンタープライズ システムの展開期間中にも、このシステムを実装する組織は変化を免れません。新しいクライアント、新しい人員、組織を去る人員が生じます。EPM システムの選択と展開を実施中にも、他社の競合製品が発表されます。この事実が原因となり、麻痺状態になった組織を見てきました。完全な製品を選択できないのではないかという不安のため、他のベンダーが新製品をリリースすると、選択を担当するグループは、その新製品を検討するために、展開作業を停止します。あるいは、ある検討中の製品の新バージョンがリリースされたことで、担当者全員が、すべての評価していない代替製品が存在することに不安を感じます。このようなグループでは、繰り返し何度も最初からやり直すことになります。組織の要件とソリューションの選択肢が変化を止めることは決してないため、最終決定はいつまでも実現しません。

こういった組織の問題は、そもそもソリューションを求める原因となったビジネス上の課題がなくなっておらず、また決定が行われていないために課題は解決されていない、という点です。

静的でなければどのような状態であるのか

エンタープライズ システムの展開は、「生きている」環境であれば成功する可能性が高くなります。展開は、成長、進化し、周囲の変化する状況に適応する必要があります。そして当然ながら、古くなる、未来のある時点で退役させる必要があります。このような思考様式への変化で最も重要であるのは、完全なソリューションが出発点ではないという点です。優先するのは、最も重要なニーズに対応しつつ、(まだ完全には明確になっていなくても) 将来のより複雑なニーズに適応する能力があるソリューションを選択することです。最も重要な選択の基準の 1 つは、機能の幅広さよりも柔軟性です。

膠着状態を回避する方法

静的な展開で身動きがとれなくなる状態を回避するための方法は、いくつもあります。

  • 実装計画で段階を作成し、段階を使い果たさないようにします。

    エンタープライズでの実装に段階的なアプローチを採用すれば、コンパクトな最初の段階に集中できます。当社のコンサルティング スタッフは、実行可能な最大限を特定するのではなく、最小限を特定するように指示されています。当社では、スタッフに「最小限の展開、つまり継続的にプラスの投資収益率を実現する展開を探求する」ように指示しています。この方法が優れているのは、大幅に早くシステムから価値が得られるようになり、また極小のレベルであっても、システムを将来使用するための要件がより明確になる点です。

  • 評価が可能である予算を作成します。

    多くの展開で見られた課題の 1 つは、エンタープライズ システムに関する要請を 1 回だけ行うことができるという、「1 回の訪問で十分」という発想です。代わりに、段階の予算の最初の数回はきわめて詳細であるが、将来の段階はあまり詳細にならないと想定して段階的な予算を作成すると、必ず成果が高くなります。

  • 柔軟性の高いソリューションを選択します。

    当社のスタッフは、(テレビ番組「ガンビー」の柔らかい粘土人形にちなんで)「センパー ガンビー」(常に柔軟に) というモットーを採用しています。ガンビーと同じように、次にどのような形になるかはわからないため、当社のスタッフは柔軟性という観点から考えます。顧客が選択したエンタープライズ ソリューションがどのようなものであれ、柔軟性を重視することが成功の基準です。

  • 運用が開始されても、すべての実装チームを解体しないようにします。

    主要なリソースの前進を維持します。これはきわめて一般的な課題です。エンタープライズ展開では、多くの場合、組織は最も経験とスキルを積んだリソースを割り当てる傾向があり、これはシステムの選択と実装に実際に役立ちます。ただし、これらのリソースは次の重要なプロジェクトで必要な人員であり、システムが運用を開始した時点でこのプロジェクトから引き抜かれる可能性が高く、さらに最も重要な連結点に配置されます。事前に計画して、長期間にわたって特定の主要なリソースと実装を併存させると、大きな効果を実現できます。

  • 小規模であってもスキルの高い、永続的なシステム強化チームを作ります。

    エンタープライズ システムの要件をまとめて整理するチームは、ビジネス プロセス、システム機能、他の主要なエンタープライズ システムとの統合などを調査検討します。システムがインストールされた時点でこれらの担当者がシステムから離れると、将来の進化が非常に困難になります。エンタープライズ システムと、場合によっては他の関連するシステムに、組織のニーズとシステムの機能が定期的に評価される、長期的な進化のケアが行われるようにします。

実際の使用から学習する

  • 早い段階でシステムを運用に移行します。

    これは、現在の世界で 5 年前よりも大幅に容易になっています。クラウドベースのインストール環境およびリモートでアクセスできるサービスを利用すると、すばやくシステムを稼働させることができます。クラウドとオンプレミス両方のサービスを搭載した多くのエンタープライズ システムには、一方から他方に進化する手法が存在します。これは、Project Server では間違いのないことですが、当社のシステムにも該当します。

  • 結果的にシステムが強化されるフィードバック ループを確保します。

    改善可能な事象が見つかることは喜ばしいことです。既に展開したシステムを担当者が使わなくなることを懸念して、改善の提案に消極的な実装チームが存在します。当社の経験では、改善の提案を行う人物は、通常、エンタープライズ システムの最大の支持者です。すぐにアイデアを実現できない場合であっても、アイデアを歓迎するべきです。エンタープライズ システムに関する新しいアイデアを特定および推奨するための仕組みを作ると、担当者全員の関与を維持し、大きなメリットをもたらす可能性があります。

  • すぐには希望を捨てないようにします。

    企業によっては、「問題はソフトウェアにある」と考え、成功の可能性が生じる前に放棄することがあります。

もう目標に到達したでしょうか?

では、いつ目標に到達するのでしょうか?

おそらく、決して目標に到達することはありません。

これは、道の途中にある通過駅は小休止に適した場所ではない、という意味ではありません。エンタープライズ プロジェクトやエンタープライズ タイムシート システムなどのエンタープライズ ソフトウェアの新しい実装に対する最初の目標は、プラスの投資収益率を実現する運用環境でなければなりません。レイヤーまたは段階で展開可能であり、成長、適応、変化が可能である十分な柔軟性が備わったシステムを求めれば、完全な目標を選ぶために立ち止まるよりも高い生産性が途中で見つかる可能性が高くなります。

著者について

Chris Vandersluis 氏は、カナダのモントリオールに拠点を置き、Microsoft 認定パートナーである HMS Software 社の社長であり創業者です。マギル大学で経済学の学士を取得し、プロジェクト制御システムの自動化に 30 年以上携わってきました。PMI (プロジェクト マネジメント協会) の古くからの会員であり、MPUG (Microsoft Project Users Group) のモントリオール、トロント、ケベックの支部の設立を支援しました。Vandersluis 氏が寄稿した出版物には、Fortune、Heavy Construction News、Computing Canada magazine、および PMI の PMNetwork などがあり、Project Times のレギュラー コラムニストです。マギル大学で上級プロジェクト管理を教えており、北米および世界中のプロジェクト管理団体の会合で頻繁に講演しています。HMS Software 社は TimeControl プロジェクト指向型の時間管理システムの発行元であり、1995 年から Microsoft Project ソリューション パートナー企業です。

Chris Vandersluis 氏のメールの連絡先は chris.vandersluis@hms.ca です。

Chris Vandersluis 氏の EPM 関連のその他の記事については、HMS 社の EPM ガイダンスのサイト (http://www.epmguidance.com/?page_id=39) を参照してください。

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