経歴に傷を付けずにプロジェクトを中止する (英語): ホワイト ペーパー

このホワイト ペーパーは、「最前線の現場から」コレクションの一部です。 プロジェクトを中止すべきときを認識するためのベスト プラクティス、中止する利点、プロジェクトを中止するときに考慮する必要がある事項について説明します。

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経歴に傷を付けずにプロジェクトを中止する

プロジェクト マネージャーは、性格的に物事をなかなか中止できない人が多いようです。 簡単に中止できる人は、プロジェクト マネージャーという役割にはまったく魅力を感じないでしょう。 成果主義や課題動機型、弱音を吐かない人、目標実現型、楽観主義や悲観主義者など、さまざまなタイプの人がいますが、 プロジェクト マネージャーは、本質的に楽観的な見通しを立てる人が多いようです。 プロジェクトの初期の段階では、うまくいかないことを考えることはまずないため、プロジェクト マネージャーは、完成したプロジェクトの姿を思い描き、 プロジェクトを完成させることにこだわろうとします。

この記事を読んでも、「本当はプロジェクトを中止したくないので、なんとか続ける方法を教えてほしい」と考える人がいるかもしれません。

そのように考えるのは、あなただけではないでしょう。

プロジェクト マネージャーは、本来チアリーダーのようなものです。 ご覧になったかどうかわかりませんが、以前『パーフェクト ストーム』という映画を観たとき、嵐の中、船が波風にもまれている場面で、私は 「がんばれ、きっと大丈夫だ」と心の中で応援していました (ネタばれ: 船が持ちこたえられないことは、映画が始まる前にわかっていましたが、 それでも無意識に応援していました)。

ときには、終わらせることも大事

アメリカ先住民族のダコタ族には「馬が死んだら、すぐ降りろ」ということわざがありますが、プロジェクト マネージャーは、決して馬から降りようとはしません。 乗り手 (プロジェクト マネージャー) を変え、動かなくなった 2 頭の馬 (プロジェクト) を一緒にすれば、チームとして荷馬車を速く引くことができるかもしれないと考えようとします。 また、馬の名前 (プロジェクト名) を変えたり、乗り手 (プロジェクト マネージャー) を送り込んで馬を調教したり、馬 (プロジェクト) に餌 (資金) を与えようとしたりもします。馬が死んでいること (プロジェクトが失敗したこと) をだれも気付かないでほしいと思いながら、だれもがすでに知っていること (プロジェクトが失敗したこと) を口に出さずに、馬に乗って静かに待ったりもしますが、 馬が動くことはありません。

しかし、現在のプロジェクト管理の世界では、1 つのプロジェクトを越えてポートフォリオ管理まで拡大することに重点が置かれる傾向があるため、プロジェクトを同じリソースで完成させる必要がある場合、プロジェクトを中止することが、組織全体にとって最善の選択肢になる場合があります。

プロジェクトの中止は、続行することが適切でないという事実を認めることから始まりますが、 それが明確にならないこともあります。 組織によっては、ステージ ゲート プロセスをプロジェクト ポートフォリオ管理の環境の一部として採用しているところもあります。 ステージ ゲート法とは、プロジェクトの各フェーズ間で一定の形式の評価を設定し、その評価に合格したプロジェクトが次のステージに進めるようにするプロセスのことです。 ただし、このような構造でさえも、プロジェクトを中止することには抵抗が伴うものです。 ステージ ゲートの環境を整えて導入しても、プロジェクトが一度開始されると、政治的な力ではなかなか中止できないことはよくあることです。 これでは、ステージ ゲートがあっても、すべてのゲートが開いている状態です。

プロジェクトを遅らせたり、中断または中止したりすることができないと、ステージ ゲートの価値はほとんどありません。

プロジェクトを先に進めるべきでない理由は、数多くあり、 だれかの責任になるとはかぎりません。 プロジェクトの経済状態が変わった場合もあるでしょう。 最終製品で想定していた価格が実現できないために、 期待していた投資利益率が明らかに得られないなどの理由もあります。 経済状況自体の変化もあるでしょう。 高級品がもはや売れない地域では、高級品のプロジェクトを立ち上げても意味がありません。 こちらが予想して準備する前に、競合他社が商品計画を変更して、競合する製品を発表することもあります。 また、プロジェクトの成功に必要な専門知識を備えた人材を失った場合や、プロジェクトの予算、スケジュール、リスク、品質、複雑度の基準を大幅に超え、プロジェクトの続行に疑問が出てきた場合もあります。

プロジェクトがすでに開始されたら、どのようにして中止するか

一定の形式のステージ ゲート プロセスやアドホックなビジネス レビュー プロセスなど、プロジェクトの中止を決断する方法はいくつかあります。

その中で、最も明確な方法は、ビジネス ケースの "リフレッシュ" を行うことです。 プロジェクトの開始時にどのようなビジネス ドライバーの指標を使用する場合でも、評価が必要です。 そのプロジェクトで期待される投資利益率をまだ実現できますか。 プロジェクトの成果をまだ望めますか。 プロジェクトの開始前に、プロジェクトの評価に使用したのと同じ構造を使用すれば、現在の状況を比較できます。

PMI (Project Management Institutes: プロジェクト マネジメント協会 ) が発行する PMBOK (PM Body of Knowledge: プロジェクト マネジメント知識体系) の 10 の知識分野を使用する方法もあります。この方法では、次の各分野からプロジェクトの状態を評価し、プロジェクトの当初に期待していた内容と各評価を比較します。

  1. プロジェクト統合管理

  2. プロジェクト スコープ管理

  3. プロジェクト時間管理

  4. プロジェクト コスト管理

  5. プロジェクト品質マネジメント

  6. プロジェクト人的資源管理

  7. プロジェクト コミュニケーション管理

  8. プロジェクト リスク管理

  9. プロジェクト調達管理

  10. プロジェクト関係者管理

ここでは、8 番目のリスク管理を例として見てみましょう。 プロジェクトは、初日に最もリスクが高くなります。 初日は、"未知" の要素が最も高いからです。 最終日には、プロジェクトを納品したため、リスクはゼロになります。 どのような結果になったかがわかるためです。 当然ながら、プロジェクトの進行に伴い、リスクが少なくなることが予想されます。 本当にそうでしょうか。 リスクが増え続けている場合は、プロジェクト範囲の再考が必要になっている兆候かもしれません。

投資利益率 (ROI) 分析 (ビジネス レビューのためにプロジェクトを一時中断するタイミングを考える場合に常に重要になります) を行う場合は、投資 (I) はゼロにはならないことを忘れないでください。 すでに費用をかけているため、検討する必要がある投資は、プロジェクトの完成に要する残りのリソースと費用になります。 プロジェクトを中止すると、利益率 (R) がゼロになることがありますが、少なくとも投資 (I) がこれ以上増えることはありません。

ビジネス レビューを行っている場合は、機会費用について考えることも重要です。 このプロジェクトにこれ以上費用をかけず、リソースが割り当てられなければ、これらを価値のある別のプロジェクに割り振り、ここで失った投資を回収できるかもしれません。

うまく終わらせる

プロジェクトを中止する場合は、終わらせ方にご注意ください。 プロジェクトを感情的に終わらせると、プロジェクトを続行するよりも損害が大きくなります。

中止しようとするプロジェクトに携わったチーム メンバーのケアも忘れないでください。 ビジネス レビューでは、スタッフから意見を聞く場を設け、納得のいくまで話し合ってください。 おそらく、思ってもみなかった考え方がスタッフから出てくると思います。 すべて貴重な意見になるでしょう。

その中から、プロジェクト終了の重要なベスト プラクティスを採用し、このような状況で活用してください。 次のようなベスト プラクティスが考えられます。

  • スタッフと会議を開き、進行中の作業から吸い上げることができるものがないかを確認します。 この中に、思いもよらなかった役に立つものがあるかもしれません。

  • ここでは、非難することを避けてください。 非難は一般的に無益なことです。何をすべきかよりも、だれに責任があるかを追及することは、前向きな結果を得られなくなる可能性があります。

    会議の内容をまとめて、プロジェクトを中止し、チーム全員に参加してくれたことを感謝します。 このプロジェクトから得た教訓と他のプロジェクトのドキュメントを、作業生産物と一緒に記録して保管します。

  • プロジェクトの決算を行い、 実際のコストと利益を計算します。 下請業者のことも忘れないでください。 未処理の請求についてもすべて処理し、長期契約など、ベンダーとの間で未処理のものがないようにします。 彼らとは、次のプロジェクトでまた一緒に作業する可能性があります。

プロジェクトを今中止することの利点

悪いことばかりではありません。 ビジネス レビューの中で、これまでのプロジェクトの投資から得られたもので注目すべきものがあるかもしれません。

その中で、最も明らかなメリットは、プロジェクト チーム メンバーの新たな活用です。 プロジェクトを中止すれば、彼らはこのプロジェクトに携わることがなくなるため、すぐに別のプロジェクトに割り振ることができます。

次のメリットはサルベージです。 驚くべきことに、進行中の多くの作業は、他の目的に応用できます。 完成した (控えめですが) 製品になる場合もあれば、 他のプロジェクトにすぐに役立つ修復可能なモジュールの場合もあります。 これまで達成したものをすべて投げ出すことは、多くの場合、大きな間違いです。 これまで費用をかけてきたハードウェアやソフトウェア、サブスクリプションやサービスなども、サルベージの対象として考えることができます。 これらのライセンスは、組織の別の部分で有効活用することもできるでしょう。

金銭的なメリットではありませんが、士気を高めることもできます。 中止する必要があるプロジェクトに携わっているほとんどの人は、問題が発生する前に中止すべきであることをわかっています。 不安な要素があるよりも、問題が明るみになる方が安心する場合がほとんどです。プロジェクトの終了が従業員の雇用の終了を意味しないことがわかれば、スタッフも安心して、より生産的なことに取り組むことができます。

キャリアについてはどうでしょうか。 失敗にかかわったことにならないでしょうか。

2005 KPMG が、Global IT Management Survey を開催しましたが、 その中で、中止する必要があったプロジェクトについて話し合われ、コメンテーターの 1 人が「期待された成果が出そうにないプロジェクトを中止しても、それを失敗と見なすべきではありません。そのようなプロジェクトを中止しないことの方が失敗と見なされるべきです」と述べましたが、まさにそのとおりです。 続行すべきでないプロジェクトを支援すれば、解決できるどころか、問題の渦中に巻き込まれるだけです。

このような期待されていないプロジェクトを中止することは、組織の中で仲裁人としての役割を担えるというメリットもあります。 都合の悪い情報でも積極的に取り上げ、説明することができれば、結果として、経営者の信頼も確実に高まり、 プロジェクトを中止できれば、多くのデータや役に立つ情報を得ることもできます。 また、サルベージしたものを報告し、投資とそれによって得たもの両方の真の清算も可能になります。 プロジェクトを中止することが必ずしも失敗になるわけではないことを経営者に理解してもらうには、組織の他の部分に対するメリットを明確にする必要もあります。 要するに、中止するプロジェクトからチーム メンバーを自由にできれば、他のプロジェクトが成功する可能性も高まるのです。

プロジェクトを中止したいと思う プロジェクト マネージャーはいません。 プロジェクト マネージャーは、性格的にそのようなことはできません。 しかし、それは、プロジェクト マネージャーとして自然なことであるため、このような問題に対処できるように準備をしておくことが求められます。

著者について

Chris Vandersluis 氏は、Microsoft 認定パートナーであり、モントリオール (カナダ) に拠点を置く HMS Software の社長兼創業者です。 マギル大学で経済学の学士を取得し、プロジェクト制御システムの自動化に 30 年以上携わってきました。 PMI (プロジェクト マネジメント協会) の古くからの会員であり、MPUG (Microsoft Project Users Group) のモントリオール、トロント、ケベックの支部の設立を支援しました。 氏は、Fortune、Heavy Construction News、Computing Canada Magazine、PMI の PMNetwork などにも寄稿しており、Project Times のレギュラー コラムニストでもあります。 マギル大学では上級プロジェクト管理について教えており、北米および世界中のプロジェクト管理団体の会合でもたびたび登壇しています。 HMS Software は、プロジェクト指向型の時間管理システム TimeControl のベンダーであり、1995 年から Microsoft Project Solution Partner です。

Chris Vandersluis 氏のメールの連絡先は chris.vandersluis@hms.ca です。

Chris Vandersluis 氏の EPM 関連のその他の記事については、HMS 社の EPM ガイダンスのサイト (http://www.epmguidance.com/?page_id=39) を参照してください。

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