関数の正確さの向上を図り、一貫性のある機能で期待に応えるため、また、関数名によってそれぞれの機能をより正確に理解してもらえるように、複数の Excel 関数について更新や名前の変更が行われました。新たに Excel 2010 の関数ライブラリに追加された Excel 関数もあります。
下位互換性を確保するため、名前が変更された関数は変更前の名前で引き続き利用できます。
この記事の内容
正確さが向上した関数
次の関数では、機能の正確性およびパフォーマンスを高めるため、アルゴリズムの変更が行われました。 たとえば、BETADIST 関数は正確ではなかったため、この関数の精度を向上させるために新しいアルゴリズムが実装されています。 MOD 関数では新しいアルゴリズムを使用して正確さと速度の双方を達成し、RAND 関数では新しい乱数アルゴリズムを使用するようになりました。
向上した機能 |
関数カテゴリ |
名前が変更された関数
以下の統計関数 (参照) は、科学界の関数定義および Excel の他の関数名との間でより一貫性を持つように、名前が変更されました。 新しい関数名は、その関数の機能をより正確に表しています。 たとえば、CRITBINOM は二項分布の逆関数値を返すため、BINOM.INV の方がより適切な名前です。
BETA.DIST など、いくつかの名前が変更された関数は、分布の種類 (左テール累積分布や確率密度分布) を指定できるように、追加のパラメーターを伴います。
以前のバージョンの Excel との下位互換性を確保するため、これらの関数は、互換性のある関数 (参照) カテゴリに記載されている変更前の名前で引き続き利用できます。 ただし、下位互換性を確保する必要がない場合は、変更後の名前を使用してください。
名前が変更された統計関数
名前が変更された関数 |
互換性のある関数 |
新しい関数
以下の関数が Excel 関数ライブラリに追加されました。 これらの関数は現在のバージョンの Excel で使用できますが、以前のバージョンの Excel とは互換性がありません。 下位互換性を確保する必要がある場合は、互換性チェックを実行し、ワークシートで必要な変更を加えてエラーを回避してください。
新しい関数 |
関数カテゴリ |
用途 |
週末がどの曜日で何日間あるかを示すパラメーターを使用して、開始日と終了日の間にある稼働日の日数を返します。 |
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週末がどの曜日で何日間あるかを示すパラメーターを使用して、開始日から起算して指定した稼働日数だけ前または後の日付に対応するシリアル値を返します。 |
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リストまたはデータベースの集計値を返します。 |
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指定された基準値の倍数のうち、最も近い値に数値を切り上げます。 数値は正負に関係なく切り上げられます。 |
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指定された基準値の倍数のうち、最も近い値に数値を切り上げます。 |
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累積β確率密度関数の値を返します。 |
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累積β確率密度関数の値を返します。 |
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スチューデントの t 分布を使用して、母集団に対する信頼区間を返します。 |
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標本の共分散を返します。共分散とは、2 組の対応するデータ間での標準偏差の積の平均値です。 |
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誤差関数の積分値を返します。 |
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x から無限大の範囲で、相補誤差関数の積分値を返します。 |
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F 分布の確率関数の値を返します。 |
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F 分布の確率関数の逆関数値を返します。 |
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指定された基準値の倍数のうち、最も近い値に数値を切り上げます。 数値は正負に関係なく切り上げられます。 |
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ガンマ関数 Γ(x) の値の自然対数を返します。 |
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配列またはセル範囲として指定されたデータの中で、最も頻繁に出現する値 (最頻値) を縦方向の配列として返します。 |
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特定の範囲に含まれるデータの第 k 百分位数に当たる値を返します (k は 0 より大きく 1 より小さい値)。 |
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配列内での値の順位を百分率 (0 より大きく 1 より小さい) で表した値を返します。 |
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0 より大きく 1 より小さい百分位値に基づいて、配列に含まれるデータから四分位数を返します。 |
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数値のリストの中で、指定した数値の序列を返します。 |
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スチューデントの t 分布のパーセンテージ (確率) を返します。 |
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スチューデントの t 分布の t 値を、確率と自由度の関数として返します。 |
下位互換性
Excel 2010 をインストールしていない他のユーザーとワークシートを共有する必要がある場合は、名前が変更された関数ではなく、互換性のある関数を使用してください。 以前のバージョンの Excel が変更前の関数名を認識して、期待する結果を返します。
互換性のある関数の検索
互換性のある関数をすべて検索するには、次の操作を行います。
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[数式] タブの [関数ライブラリ] グループで [関数の挿入] をクリックします。
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[関数の分類] ボックスの [互換性] をクリックします。
ワークシートでの適切な関数の選択
ワークシートで関数の入力を開始すると、数式オートコンプリートで、名前が変更された関数と互換性のある関数の両方が一覧表示されます。 識別アイコンを使うと、目的の関数をより簡単に選ぶことができます。
互換性に関する問題のチェック
本記事で前述したように、新しい関数は以前のバージョンの Excel と互換性がありません。 以前のバージョンの Excel では新しい関数を認識することができないため、 期待どおりの結果ではなく、#NAME? エラーが表示されます。 以前のバージョンの Excel のファイル形式にブックを保存する前に、互換性チェックを実行して新しい関数が使用されているかどうかを判断することができます。 これにより、エラーを回避するために必要な変更を行うことができます。
互換性チェックを実行するには、次の操作を行います。
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Office ボタンをクリックして、[情報] をクリックします。
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[配布準備] で [問題のチェック] をクリックし、[互換性チェック] をクリックします。